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依頼者は24歳、先月末で水商売を辞め、現在無職。
夜のお仕事をされていただけに、かなりの美人である。
「あんな男の言葉を信じた、あたしがバカだったんです」
最初の電話で、彼女は怒りに満ちた声で言っていた。
その日の夕方、私を訪ねて来社してくれたのである。
「あのろくでなし男を、捕まえて来て下さい」
まだ怒っている。いや、完全に相手を憎んでいる。
恋人ですか? それとも旦那さん? どうして探してるんです?
「"でした"って言ったらいいのかしらっ!? 地獄に落としてやる!」
ちょっ、ちょっと落ち着いて・・・!
御機嫌を取ったり、お茶を入れ替えたり・・・探偵も、サービス業だ。
「すみませんね、取り乱しちゃって。あはは・・・」
こっちも、アハハ…である。
彼女と、その「ろくでなし男」とまで言われる男は、1年半ほど交際し、そのうちの1年を同棲していたらしい。
形としては、1人暮らしをしていた彼女のマンションに、男が転がり込んでいる。
4ヶ月ほど前に、結婚を申し込まれたらしい。
「でも今考えたら、おかしな事ばっかりなんですよね」
左の薬指にはめた婚約指輪を触りながら、彼女は言った。
彼女の言う、男のおかしな事とは・・・
1.結婚するというのに、彼の親に会った事がない。
2.実家が何処にあるのか、通りすがりに外見だけは見たものの、入っ
た事はない。
3.彼女の実家に行きたがらない、親に会いたがらない。
4.互いの両親に会おう、会わせようとすると「結婚は俺達の問題だ」
と言う。
5.時々地方へ出張に行くのだが、夜になると電話がつながらない
(電源OFF)。
6.よく財布から現金がなくなる。
7.給料がいくらか知らない。というか、同棲しているのに、お金をもら
った事がない。
よく付き合ってましたね・・・。
「まぁ親の事は気になってたんですけど、金銭面ではあんまり気にならなかったんですよ。
もともとは私の家だし、買物だって私がするんだし。それに私は月収が良かったから・・・」
サバサバした性格で売れっ子だった彼女、平均すると月に70万は稼いでいたらしい。
そして、男が姿を消す前、2人の仲は急変した。
1.毎日、喧嘩を繰り返していた。
2.帰って来ない事が多くなった。
3.携帯に電話をしても、5回に1回の割合でしか出ない。
4.会社に電話すると、居留守を使われた。
5.直接会社に行ったら、"業務妨害で訴えるぞ!"と追い返された。
男は1週間前に突然いなくなり、音信不通だという。
探し出して、どうするつもりなんですか? 婚約破棄の慰謝料を請求したいとか?
「別に今まで使ったお金なんて、どうだっていいんです。
私の通帳持ち出してるくらいだから、過去のお金なんか返ってこないと思う」
ええ!? 泥棒じゃないですか、それ。
「あっ、大丈夫。止めてあるから使えないし、残高は別の通帳に移したから。
それより、喧嘩の原因を解決しなきゃならないんです」
原因はなんだったんですか?
その問いに、彼女はニッコリ笑って、お腹を擦りながら答えた。
「いるんですよ、ここに。もうすぐ5ヶ月」
たった1度、避妊をしなかった。
「妊娠したらどうするの?」と彼女が聞いた時、彼は「婚約したんだから産むに決まってるだろう」と言ったそうだ。その言葉を、彼女は信じたのである。
結婚はしなくてもかまわないが、子供は産むつもりでいる。
「そのために出産費用や今後の養育費、認知問題を話し合いたいのだ」
と彼女は言った。
対象者の名は大内晃(仮名)、29歳。ネジやボルト等をあつかう●●工業(株)で、営業をしている。
会社は依頼者のマンションの所在地と同区にあり、車で30分程度。
依頼者の情報によると、会社に勤務している事は間違いないようなので、
勤務先を調査開始場所とした。
行方不明というわけではないので、急いで探す必要はない。
そこで我々は、まず対象者の素性を調べる事にした。
依頼者の話では、対象者の実家は隣町の●●南区。調査の結果、事実である事が判明。
そこには現在も対象者の両親と弟が住んでおり、閑静な住宅街にある。
だがしかし。
依頼者と同棲を始める前に住んでいたとされる住所を調べると、かなり大型の県営公団である事が分かった。
独身の男性が、公団に住むとは奇妙な話である。会社の寮か・・・?
公団は、住居者の名前が表示されてある。確認してみると、対象者の名前を発見した。B棟605号室。
私の胸騒ぎが的中した。彼は妻帯者である。
調査の結果、以下の事が判明した。
1.対象者が妻・香織(仮名・27歳)と入籍したのは、依頼者との交際
が始まるわずか半年前である。
2.依頼者に出張と言っていたのは、妻・香織の元へ帰るためで
あった。一方香織には、「大きな仕事を取ったので長期出張」と
言っていた。
3.対象者には5つの消費者金融、カード、ローンなどを合わせて、
計400万円の借金があり、月々の返済に追われている。
4.依頼者に渡した婚約指輪は、自分の結婚指輪を知人の宝石店へ
持ち込み、溶接してデザインを変えた物だった。
給料は全額妻の元へ渡るので、依頼者から盗んだ金が借金返済に当てられたと思われる。
あげくの果てに、妊娠までさせているとは・・・。
対象者の勤務先で張り込みをしていた調査員から、動きがあったと連絡が入った。
対象者は仕事を終え、妻の待つ自宅へ帰るらしい。
すべてを映像におさめ、報告書にまとめる。
依頼者の怒りが、手に取る様に分かる。
「はぁっ!? 妻ぁ!? あいつ、結婚してたの? 信じられない! 殺してやるっ!」
案の定、依頼者は凄い剣幕で怒りを爆発させた。
とてもこの場に書けないような言葉で、怒りを吐き出している。
でもですね、法的には、あなたが不利なんですよ。なんと言っても不貞行為ですから。
婚姻の事実を知らなかったと証明しなきゃならないし、それは非常に難しい。
ただ、あなたは対象者の子供を妊娠してますから、ちゃんと裁判して、損害賠償請求して、お金を出させないとダメです。
不貞行為と、子供に対する権利義務は、まったく別問題なんですからね。
殺したら、何にも貰えないんですよ! その前に、お腹の子に障るから、とにかく落ち着いて・・・
しばらく興奮して罵倒していた依頼者も、ようやく落ち着きを取り戻した。
弁護士を紹介し、報告書を持って相談に行くように伝えた。
たった1人の男のために、彼女の人生は大きく変わってしまった。
散々悪口を言っていたが、彼女はまだ対象者の事を愛していたのだろう。
男は、その愛情をお金に換算し、気持ちを踏みにじり、
都合が悪くなったから、切り捨てたのである。
こんな男は、意外と身近にいる。
引っかからないに越した事はないが、万が一、引っかかってしまった時は、この依頼者の様に、泣き寝入りしないで立ち向かってもらいたい。
女は、男の心を落とす為に嘘をつく。
男は、女の服を脱がす為に嘘をつく。
・・・これは単なる自説である。お気を悪くされた方は申し訳ない。
ただ、この言葉がいちがいに間違いとも言えないような事件は多々ある。
今回の依頼者は後者、「男の嘘」に人生を狂わされた女性だった。
次回に続く
今村啓一朗 福岡県出身 37歳
中小企業における民事訴訟のあり方や、それに君臨する弁護士行政に疑問を感じ、自ら経営していた会社代表を辞め、探偵業界に身を投じた。民事事件に関する情報の収集と訴訟に関する証拠収集の技術を習得。業界最大手の探偵養成学校の講師のスペシャリストとして名を馳せる。
今村自ら機密調査機材として開発してきた機材は数知れず、製造した機器は、今や探偵七つ道具となっている。これからの犯罪防衛は自分で守らなければ・・自ら開発した機密調査機器をセキュリティ機器として考案。日本に唯一、一台しかない特殊調査車両の設計から開発まで自ら製造し2001年4月防犯機器会社設立に貢献した。
平成14年1月、福岡に総合探偵社MISSIONhttp://www.themissions.jp
を設立し全国でNO1の実績はTV・ラジオ・雑誌でなど数社に渡って紹介された。
平成16年3月 MC探偵学校http://themissions.jp/school/
を設立し現在までに多くの探偵を世に送り出して来た。
現在、総合探偵社MISSION MC探偵学校を始め 個人審査事業会社や
インターネットソリューションの開発・企画会社も経営。
(2005.1現在)
総合探偵社MISSION 0120−755−340 http://www.themissions.jp
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