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更新日200541
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SMILE  〜F.L.Y PART2〜

第6回 Prime Suspect



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1:30 麻布
牢獄のように設えた部屋の中に鞭がしなる音が響き渡る。
「アアッ、モット、モットムチヲクダサイ、ごシュジン様」。壁に張り付けられた女性は恍惚の表情を浮かべながら、鞭を振るう男性に懇願した。
「メス豚め。もっと鞭が欲しいのか?なら死ぬまでくれてやる」。男は女性を罵倒しながら、さらに激しく鞭を振り下ろしていく。
あまりの激しい責めに女性は気を失った。男はニヤリとしながら、女性の頬を2度張った。女性はその痛みで意識を戻した。
「アナタ、ハードね。マンゾクシタ?ダッタラ、クサリヲハズシテヨ」女性は片言の日本語で言う。「分かったよ。鎖をはずす前に痛み止めをあげよう。口を開けなさい」男はさっきとは打って変わって優しい口調になった。
女性は従順に口を開ける。そこに男性はクリスタルのような錠剤を入れ、水を流し込んだ。
女性を鎖につなげたまま、男は3分ほど髪をなでていた。
「気分はどう?」
「ナンカ、ヘン・・・」女性はそう言うと同時に頭を激しく一回振るわせた。
男は髪を引っ張りながら、女性の頭を上げる。
女性の顔には今までは見られなかった狂気な「笑み」が浮かんでいた。

2:00 歌舞伎町
この時間なのに、区役所通りはスムーズに歩けないほど、人で賑わっている。その人ごみを掻き分けるように、ヒサキは進んでいく。緩やかな上りが終わると、左側にバッティングセンターが見えてきた。ヒサキはその角を曲がり、奥に進む。
5分ほど歩くと、文君酒家という豪華な中華料理店が目の前に現れた。
テルが教えてくれた、王岱明の残党が仕切っている組織の根城がここだ。
中華料理店は2階建てになっており、その2階部分に事務所があるという。
さらに3階より上は会員制ホテルという体裁の「連れ込み宿」で、事務所で女性のブックを見、気に入った女がいればその場で金を払って上でその女性を抱けるシステムになっている。
「聞いた話なんではっきりしないんですが、アゲハの売買もこの事務所で行われているらしいです」テルはそう言った。
ヒサキは店内に足を踏み入れた。店内は、70席はあろうかという広さだ。深夜にもかかわらず、客は多い。全員がその筋の男と、水商売の女性だが・・
ヒサキは空いている席に座った。愛想のないウエイターが「飲み物は?」と中国人特有のぶっきらぼうな口調で聞いてくる。
「これが欲しいんじゃない。別のメニューだ」ヒサキはそう答えた。

2:15 渋谷
道玄坂の百軒店入り口がパトカーで埋め尽くされている。20分ほど前に発砲事件が起こったのだ。
ヒサキに裏の仕事の依頼をした刑事の山根もその現場に来ていた。
「今日は、物騒な日だな、えっ?早朝に事件があったと思ったら、夜中は発砲事件だとよ」
山根は若い刑事にそう言いながら、2つの死体をのぞき見る。
一人は若い中国人だ。彼は、早朝までやっている性感マッサージに入ろうとして、3発を撃ち込まれて即死していた。
もう一つの死体は、インテリやくざ風の成りをした日本人男性だが、その顔には不気味な「笑み」が浮かんでいた。男は、中国人を撃った後、自らのコメカミに銃弾を撃ちこんでいた。
「スマイル・・・か」山根はそう呟いた。
彼は、もう一度中国人の死体の方を向き、上着のポケットに手を入れて中を探った。
ポケットから出てきたのは、明らかに偽造と思われるパスポートと、ロッカーのカギだった。そして、彼はロッカーのカギだけを自分のポケットにしまった。
山根は立ち上がろうとした瞬間、シャツの袖から覗く男の手首に彫られたタトゥに気づいた。
再びしゃがみこんで、シャツの袖を捲り上げる。
竜の中に「我們一同死的時候」という文字が入ったタトゥだ。
「おい、鑑識。この手首のタトゥ撮っといてくれ」山根は叫んだ。


2:30 歌舞伎町
ヒサキは文君酒家の2階にいた。
別のメニューだと言ったヒサキにウエイターは「上に上がれ」と目配せしてきた。
2階は個室と厨房がある。ヒサキは巨大な厨房を通り、その奥に案内された。
大きなステンレス製のキッチテーブルに、太った男が座っている。
テーブルの上には様々な料理が並んでおり、その男はうまそうに蟹にしゃぶりついている。
「アンタ、誰?初めて見る顔ネ」男は口に料理を入れながらそう言った。
「俺のことを知らないなんて、オマエは小物だな」とヒサキ。
「アンタみたいな若造知るわけがないネ。」男は細い目に邪悪な光をたたえながら凄んだ。
「アゲハってドラックがあるだろ?それが欲しいんだ。ここで密売してるって噂を聞いたんでね」ヒサキは男の目を見据えながら言う。
「アゲハ?そんなものは知らないヨ。痛い目に合わないうちに帰ることネ」
男が目配せするとヒサキの後ろに、レスラー風の屈強な男2人が寄ってきた。
2人はヒサキの両腕を抱えて強引に立たせた。
「クスッ」ヒサキは微かに笑った。その瞬間。
右側の男の腹部に強烈な肘突きが入った。
不意の攻撃に男は白目をむいて昏倒する。
「てめえ」左の男がヒサキの首を絞め上げようとしたが、ヒサキの強烈な蹴りを急所に食らって泡を吹いてひざまずく。その顎にに今度は膝蹴りを食らわせると、大量の血を吐きながら大字に倒れた。
「あ、あ、あ」太った男は呆然とヒサキを見つめている。
「俺は後輩を殺られて頭来てんだ。ア・ゲ・ハはどこだ?てめら、そのブツどっから仕入れてんだ?」
「し、知らない。ホントに知らないヨ」男は震えている。
ヒサキはテーブルの上に置かれた中華包丁を手にすると、男の右手を取り無言でそれを振り下ろす。
「ギャー」右手の指4本を切断された男は絶叫しながら、席からずり落ちた。
「言う気になったか?アアッ?ゲロらないなら、次は左もいくぞ」
ヒサキは男の左手を掴み、包丁を振り上げた。
「た、助けて。私は何もやってないヨ。フォンさんが、どこからか仕入れてきて売りさばいてるんだヨ」
「フォン?そいつが、お前らのボスってわけか?色々と詳しく聞かせてもらおうか」
ヒサキの顔には凄まじい笑みを浮かんでいた。

3:00 麻布
男は女性を鎖からはずして、立たせた。
「今日は、ありがとう。これはお礼だ」男は女性に10万円を渡した。
「アリガトウ。マタ、アソボウネ」
女性は部屋からややふらついた足取りで出て行った。
「3:00AMチェック。被験者が行動を起こすまで12時間。これに成功すれば、SMILEはコンプリートに一歩近づく・・」
男は手にしたミニマイクに向かって呟いた。
「被験者の行動は、正常の中の狂気。誰も被験者が異常であるとは気づかない」
そう言い終わると男は録音を止めた。
「ククククッ」
不気味な笑い声だけが、部屋に響き渡っていた。